尾坂先生から学生へメッセージ
HPにアクセスしてくれてありがとうございます。我々の研究室では、何事も一生懸命、“Work hard, play hard”をモットーに、私も学生も日々頑張っています。ぜひ、我々と一緒に、人があっと驚くような研究をしましょう!
研究室の年間スケジュールとQ&A
Q: 研究室に配属されたら、まず何から始めますか?
A: 新4年生のみなさんは例年、3月初めに研究室に配属されます。尾坂研究室は有機合成が主体なので、春休み明けの4月初めから約1ヶ月間、練習実験を通して有機合成の基礎を身につけます。合成を進める上で特に重要な、窒素/真空ラインの使い方や薄層クロマトグラフィー(TLC)のやり方、カラムクロマトグラフィによる合成化合物の精製、NMRの解析など、先輩がマンツーマンで丁寧に教えてくれます。その間に、先輩や先生から各々の研究を紹介してもらい、π共役材料や有機デバイスに関する基礎知識と研究背景について学びます。ゴールデンウィーク前後に、尾坂先生から卒論の研究テーマについて説明があります。提示された複数のテーマの中から自分の興味のあるテーマを選択し、新4年生の研究はスタートします。
Q: 青丸の月は何がありますか?
A: 青丸の月には、研究室全体のイベントがあります。研究室に所属すると、研究するだけでなく、花見やソフトボール大会など各種イベントを通じて交流を深めています。また、新4年生を含む学生は、研究室を円滑に運営するための各種係(溶媒係、消耗品係、廃液回収係、試薬管理係、ガラス器具係、イベント係、情報メディア係)を担当します。学生が協力して、全員が気持ちよく研究できる環境を整えることは、責任感と協調性を育む良い機会となっています。
研究室では、それまで顔見知り程度だった人と、1日のうち半分近くの時間を数年にわたって過ごします。家族以外の人とこれだけ長い時間を共にするのは、みなさんにとって初めての経験かもしれません。相手の良い面も見えてくれば、もちろん、自分の考えとは異なる面も見えてくるでしょう。しかし、研究室という小さな社会において、自分だけ良ければいいは叶いません。なにより、研究は1人では進められません。同期や先輩、先生と意見を出し合い認め合う中で、主張と調和のバランス感覚が日々磨かれる研究室は、社会性を鍛える場にもなっていると思います。
Q: 報告会やミーティングの頻度を教えてください。
A: 報告会は毎週月曜日にあり、個人の報告は隔週です。データをレジュメにまとめて報告します。また、7月と2月に前期/後期報告会があり、そこではパワーポイントを使ってデータをまとめ、プレゼンテーション形式で発表します。質疑応答の時間をしっかりとって議論し合い、研究の方向性を検討していきます。もちろん、報告会以外にも毎日、先輩や同期、先生と活発に議論を重ねています。プレゼンテーション能力は、研究者はもちろん、企業人や技術者として活躍するための必要不可欠な能力です。尾坂研究室では、このプレゼンテーション能力の向上に特に力を入れて教育しています。どんどん鍛えていきましょう。
Q: 雑誌会、抄録会って何ですか?
A: 雑誌会では、前期と後期に1人1回ずつ(年2回)、自分の研究テーマに関連する他の研究グループから報告された英語論文を読み、パワーポイントを使って資料にまとめ、全員の前で発表します。新4年生のみなさんにとっては、これが初めてのプレゼンテーションになるかもしれません。最初はとても緊張すると思いますが、これを繰り返すことで人前で発言する度胸と人に分かりやすく伝える技術を身につけます。
抄録会では、学術雑誌に掲載されている最新の論文を紹介します。私たちの研究分野は進展が早く、また、昨今、学術雑誌が乱立しており、1人で全てをカバーするのは大変です。そこで、学生と先生で雑誌を分担し、レジュメを使って毎週紹介します。紹介した論文は、文献管理ソフトを使って管理しています。英語を読む力と鍵となる内容を正確に抽出する力を身につけます。
Q: 博士前期(修士)課程への進学を考えています。
A: 応用化学では約90%の学生が大学院に進学しています。一連の研究活動を通して、実験スキルや、正しい化学の基礎知識、論理的思考力を養うことを目的としていますが、これらを1年間で身につけることは難しいです。実際、尾坂研究室では、新4年生は新規ポリマーの合成に挑戦しますが、目的分子に辿り着くためには試行錯誤を繰り返すことが見込まれ、1年間のうち多くの時間を合成に費やすことになると思います。そのため、尾坂研究室の研究の醍醐味である太陽電池などの有機デバイスへの応用には軽く触れる程度で、それらのスキルや知識を身につけるには、時間がなかなか足りません。そこで、ぜひ修士課程に進学してさらに2年間研究を進め、自分の能力と視野を広げてほしいと思います。
また、多くの企業は化学の知識と実験スキルを持つ大学院生を求めています。修士課程を修了して就職する学生の多くは、応用化学科の推薦を受け就職活動を進めます。例年約35人の就職希望者に対して200社以上の推薦企業があります。皆さんが知っているような有名企業も多数あります。実力勝負の実社会で他大学出身者との競争に打ち勝てる、即戦力な研究者になれるよう、修士課程に進学し能力を高めてほしいと思います。
Q: 博士後期(博士)課程に興味があります。
A: 最近では、大学や国立研究所等で研究を続ける人だけでなく、企業で研究を続ける人にも博士号取得の必要性が高まっています。博士課程進学=大学の教員(研究者)というのはひと昔前の話です。その背景には、企業が自立して研究を遂行できる人材を求めていることが挙げられます。また、海外では博士号を持っていないと研究者として認めてもらえないので、グローバル化が進んだ現在、博士号を取得することはとても重要です。
博士課程に進学する場合、他のM2が就職活動をする中、5月上旬締め切りの日本学術振興会(JSPS)特別研究員への応募書類を準備します。これに採択されると、JSPSから月20万円の奨励費(給料)と年間100万円の研究費が支給されます。採択されるためには、申請書の内容ももちろんですが、これまでの論文数や学会での受賞歴も審査基準に含まれます。博士課程に興味のある学生は、なるべく多くの学会での受賞を目指し、M1のうちに第一著者として論文を書くことを目標に研究に励むと良いと思います。また、他にも民間財団の奨学金や研究科、研究室からサポート、あるいは授業料免除制度、奨学金返還免除制度などもありますので、経済的な面では不安に思わなくて大丈夫です。将来、研究開発で活躍したいと望むなら、博士課程に進学することを強く勧めます。3年間余分に大学院で過ごすことを躊躇する人が多いですが、社会に出て40年近く働くことを考えれば、ほんのわずかな期間です。博士課程の3年間を通して、1人の研究者として自立し、日本の化学界を牽引する存在を目指しませんか?
Q: 学会発表ってどんな感じですか?
A: 研究の進捗状況によりますが、早い人は4年生のうちに学会に参加します(3月の日本化学会春季年会や応用物理学会など)。また、修士以上の学生は、春と秋の年2回開催される高分子学会や応用物理学会の参加を目標に研究を進めていきます。学会発表が決まってからは、発表のストーリー作りに頭を悩まし、足りないデータの補足実験に奔走し、学会本番では大勢の前での発表に緊張し、とても大変かと思いますが、短期間で大きく成長できるチャンスです。この経験は、就活の面接などにも必ず活きると思います。
他にも、関連する大小さまざまな学会やセミナー(8月の有機デバイス研究会や10月のCSJフェスタなど)にも積極的に参加しています。学会は都市部や地方などいろいろな場所で開催されるので、その土地に足を運ぶのも学会参加の楽しみのひとつです。また、学会やセミナーは、他大学や企業の人と年齢問わず交流できる場でもあります。就職してから、思わぬところで繋がり、それを起点に共同研究を開始する、なんてこともあり得るので、ぜひ積極的に参加し交流を深めてほしいと思います。そのようにして得た人脈は、きっとみなさんの人生の役に立つと思います。
Q: ぶっちゃけ尾坂研究室は厳しいですか?
A: これから研究室を選ぶ学生にとって、何を基準に研究室を選べば良いか、なかなかピンとこないと思います。あそこの研究室は「楽」とか「厳しい」とか、そのような噂で決める人も少なくないでしょう。しかし、少なくとも3年間所属する可能性のある研究室を、そのような安易な基準で決めるのはもったいないです。実社会に出て活躍するためには、研究室でいかに成長できるかが鍵となります。将来、自分が化学にどのように携わっていきたいかを具体的に想像して、3年間で習得したい能力を書き出してみると良いと思います。それが叶う研究室はどこですか?人の意見に流されることなく、自分自身と向き合ってしっかり考えてみましょう。
尾坂研究室では、合成からデバイス応用、さらには他大学や企業と連携して有機デバイスの実用化を目指すところまで幅広く教育します。これら一連の知識や技術を多岐にわたって学べる、めずらしい研究室だと思います。覚えることも多いですが、その分身につけられるものも大きいです。さらに、学会発表においては、自分の研究のストーリーをとことん追求し、その中に新しい化学の概念を見出し、聴衆にインパクトを与える発表を目的としています。徹底的に思考して研究を深化させるこの過程は、確かに「厳しい」ですが、それ以上の成長が結果として得られ、それが自信につながります。学生を見ていても、学会発表の前と後では、データを読み解く力や先を読んで必要な実験を見極める力などの研究を遂行する力の差が歴然としています。尾坂研究室は、志を持った学生をスタッフが全力でサポートします。他大学からの修士、博士課程への進学も歓迎しています。興味のある方は、ぜひ尾坂先生までご連絡下さい。
研究室の1日
とある4年生の1日
8:50 研究室到着。N尾さんはすでにカラムを1本やり終えている。
9:00 溶媒の充填作業、ガラス器具の片付け。M奥さんが走って居室に駆け込むが、遅刻。
9:10 実験開始。まずは実験ノートにレシピを記入。
9:30 今日はグリニャール試薬調整からの熊田カップリング。グリニャール試薬が突沸したため、真空ラインを洗浄・乾燥。家に帰りたい気持ちをぐっと堪える。
11:30 Y中さんの「ご飯行こー」の合図でみんなで昼食へ。
12:00 O坂先生がポケットマネーで買ってくれたエスプレッソマシーンでコーヒーを淹れる。ケータイをいじりながら壁にもたれかかって歯磨きをしているY中さんを横目に優雅な昼休憩。その隣でI口さんは昼寝。
12:30 実験再開。気を取り直してグリニャール試薬を調整。全集中、合成の呼吸、壱ノ型、滴下。
13:00 O川さんがドラフトの前でディスカッションを始める。頻度高め。
15:00 O本さんのモンスターの香りが居室に充満する。
17:30 Y中さんの「ご飯行こー」の合図でみんなで夕食へ。S藤くんに覇気がない。またガラス器具を割ったのか。
18:00 無事に調整できたグリニャール試薬を使って熊田カップリングを仕込む。
18:30 I口さんとT中さんが一緒に帰宅。あの二人は本当に仲がいい。
19:00 使ったガラス器具の後片付け。
19:30 研究室の番人S藤くんを横目に帰宅。
卒業生の声
周 俐慧 / Li-Hui Chou
(2022年博士課程修了、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company Limited (TSMC) Research & Development – Nano Pattern Technology Development ( Principle Engineer))
I spend almost one and half year in the Osaka lab, it was an intense and fulfilling period. It was my first time to have synthesis, although it was difficult and complicated, professor and colleague in the Osaka lab were very kind and friendly that gave huge support to achieve and accomplish my dissertation. Presentation ability, writing and communication skill improve more than I expected in these days, providing me a good connection and ability for working. I know it would be confused during this period. Think carefully what you want to do. There will surely be plenty of opportunities for you to grow in the Osaka Lab.
井口 景太郎 / Keitaro Iguchi(2022年修士課程修了、現昭和電工マテリアルズ開発部)
私は尾坂研究室で3年間を過ごし、スキル面だけでなく、研究に対する姿勢といったマインド面でも大きく成長することができました。ポリマーの合成に試行錯誤したこと、雑誌会や修論発表の準備に苦労したことなど全ての経験が成長に繋がり、会社での業務にも活かされていると感じています。研究室配属に不安を感じている方もいるかと思いますが、尾坂研究室には不自由なく研究ができる環境と先生方の手厚いサポートがあります。安心して充実した研究室生活を過ごすことができると思います。
田中 拓海 / Takumi Tanaka (2022年修士課程修了、現日産化学研究開発部門)
尾坂研究室で過ごした3年間は、これまでの人生の中で最も成長を感じた期間でした。研究に対する姿勢や考え方、資料作成や発表、基礎から専門的な知識や技術の習得はもちろん、人間的にも成長することができました。熱心で親身にご指導してくださる先生方や頼れる先輩のもとで、高いレベルの研究ができる尾坂研だからこそ、学べたことがたくさんありました。これら全ての経験が会社でも活かされていると実感しています。研究室で過ごす期間は大きく成長できるチャンスです。尾坂研なら多くの成長できるチャンスがあり、充実した研究室生活を過ごせると思います。
中尾 直哉 / Naoya Nakao (2022年修士課程修了、現住友精化研究開発部門)
尾坂研での3年間の研究室生活はあっという間でした。先生方や先輩、同期たちと議論したり学会発表等で頭を悩ませた日々や研究成果が出た時の喜びは今でも鮮明に覚えています。会社に入って壁にぶつかった時も尾坂研での経験が役立っています。尾坂研に配属された皆さん、最初は不安に思うことも多いと思います。しかし、先生方や先輩方の手厚いサポートのもと、充実した研究室生活を送ることができると思います。研究を楽しむことを忘れず、頑張ってください!皆さんの活躍心から祈っています。
市枝 慶一郎 / Keichiro Ichieda (2022年学士課程修了、現千代田ケミカル株式会社品質保証課)
私は現在、山口県田布施町にある千代田ケミカル株式会社の品質保証課で働いています。千代田ケミカルは、主に防錆剤を取り扱っている会社で、私はそこで作られた製品の品質をpH測定器、原子吸光測定器、屈折率測定器など様々な検査機器を使用して判断し、出荷可能の合否を出しています。尾坂研究室で行った製膜や薄膜蒸着の経験から、新規の機器を取り扱う時の注意点や、自分用マニュアルを作製する方法を学び、それが今の職場で非常に活かされています。一年間という短い間でしたが、この一年間で様々な事を教えて、経験させていただいた先生方、先輩方、同期、後輩のみなさんには感謝しかありません。尾坂研究室で学ぶことは、みなさんの今後の社会人生活で力になることばかりだと思います。
岡本 健太 / Kenta Okamoto(2021年修士課程修了、現住友ベークライト研究開発部門)
尾坂研究室で過ごした3年間は、とても密度の濃い充実した3年間でした。研究が上手くいかないときに何度も議論し悩んだこと、自分のポリマーが良い特性を示したことを先生と喜び合ったこと、同期と一緒に何度も修論発表練習をしたこと、尾坂研メンバーで参加したソフトボール大会で入賞したこと、、、、尾坂研での様々な出来事が、社会人になった今でも大きな財産となっています。これから研究室配属されるみなさん。研究も遊びも全力で出来る環境がある尾坂研で「Work hard, play hard」な研究室生活を過ごしてみてはいかがでしょうか。必ず皆さんの大きな成長に繋がると思います。
森奥 友和 / Tomokazu Morioku(2021年修士課程修了、キンセイマテック技術開発部)
尾坂研究室は私を大きく成長させてくれた場でした。変換効率の世界最高値を目指して、試行錯誤しながら新規ポリマーの開発に取り組んだこと、先生方や学生と議論したこと、研究室の報告会や学会で発表したことなど、尾坂研で行ったことの全てが、現在の私の糧になっています。
これから研究室に配属される皆さん、尾坂研は高いレベルの研究を先生方の手厚いサポートの中で行える魅力的な研究室ですので、研究室選択の際には尾坂研を選んでみてはいかがでしょうか?
神村 知伺 / Satoshi Kamimura(2020年修士課程修了、現旭化成研究開発部門)
研究室生活で、尾坂先生を初めとする先生方、先輩、同期、後輩など多くの人と議論しながら研究を進めた経験は、会社での業務を行う上で大きな武器になっています。大学での研究も企業での研究も自分一人では決して行うことはできません。多くの人を巻き込み、その中で自分のオリジナリティを発揮していくことが大切だと思います。これから研究室に配属される皆さん、最初は右も左も分からず不安だと思いますが、尾坂研究室には自分が頑張った分だけ親身に指導してくださる先生方、優しい先輩たちがいるので大丈夫です。私も尾坂研OBとして皆さんの活躍を心から祈っています。
阿部 達 / Toru Abe(2012年修士課程修了、現クラレ開発部門)
私は学部3年間で有機化学に興味を持ち、実際に有機化合物を合成してみたいと思い前身の研究室に入り、アメリカから帰国されて助教になられたばかりの尾坂先生の下、3年間研究に打ち込みました。尾坂先生は頻繁にディスカッションする機会を作って下さり、その中で研究の進め方や論理的思考を身につけられました。また、多くのチャンスを与えて頂き、研究の楽しさを体感できたことは社会人になった今でも大きな財産となっています。研究室での経験は今後の人生に大きく影響を与えると思います。自分のやりたいこと、なりたい姿をよく考えて選択してみて下さい。尾坂研究室ではきっと大きく成長できるチャンスがいっぱいあるでしょう。
島脇 雅史 / Masafumi Shimawaki(2012年修士課程修了、現東洋紡生産技術部)
尾坂先生や研究室の先生方、仲間と過ごした経験は、今でも大きな糧となっています。中でも、「自分の考えを相手に伝える」ということは研究室での生活や学会で鍛えられ、この経験が今の仕事に大きく生かされています。
大学卒業後、必ずしも大学の研究に近い仕事に就けるとは限りません。しかし、学問以外でも大学や研究室生活で学んだというのは、必ず卒業後の人生に生かされると思います。ですので、今の研究室での生活を楽しみながら研究に励んで下さい。